小林依子の日常雑記

友達のご夫婦が「旅するサバイバー」というイベントを開き、
日曜日には講演会とライブもあるという。
これは聞かねば。
迎えてくれた2人は楽しそうに次々と尋ねてくるお客さんをもてなしていた。
友達、仲間、以前旅で知り合った人、新聞で知って来てくれた人、満員御礼。

旅の写真がこれでもかというほど飾ってあって、
１枚1枚が大切な思い出なんやと、にぶちんの私にもすぐにわかった。
メインの写真は息子が撮ってくれたもんらしい。
乳がんになる前の彼女と乳房を切除した彼女が
大きなパネルの中で笑っちゃあった。
強くて、明るくて、まぶしい笑顔やっと。
（パパさんもがんになって大変な思いしたのにごめんね、そこはスルーして）

でも一つだけ、もっと話聞きたかったな。一方的な喋りはなかなか話が続かんのよな、
私もよ～経験すんねん。
旅の話、と、病気の話を分けて、考えると、
もっと旅の話は長くできたはずやのに惜しい！！！＆残念！！！
後ろに日本地図を置いて、指棒の先に車の絵をつけてどこをどう旅したかとか
音で地名を聞いても場所がピンとこないので。
あー先に思いついてればよかった！！！！
第2回の時はぜひぜひ司会に呼んでちょ～（まざりたいだけかい）。


＜ありがとう＞

彼女は片方の乳房を失った事実に
まだ慣れていなかった。
退院してお風呂に入った時、
改めて驚き、悲しみ、泣いた。

それはシャワーの音ではかき消されないぐらいの
慟哭だった。
夫はどうすることもできず、ただその声を聞いていた。
気のすむまで泣けばいい。
きっと彼女なら、明日は笑ってくれるという確信があった。

手術室から、暗い部屋に運ばれてきた片方の大きな乳房は
これから自分がどうなるのかを考えていた。
いきなり体から切り離されたので色んな感情が入り乱れる。
ちょっと寂しいけれど、悲しくはなかった。
これで病気は治ると思うとお別れだけど嬉しい。
今頃泣いているんじゃないかと心配でたまらない。
泣かないで。一心同体が一心異体になっただけだから。

ありがとう。ありがとう。
ずっと変わらず幸せでいてね。
ありがとう。
ありがとう。
乳房は精一杯の力でちょっとだけ揺れた。